浄土真宗本願寺派 瀧上山 善立寺

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住職の法話

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第十四代住職 松岡 文昭の法話風景画像

最後の一言

 昨年の九月、善立寺総代の三城重時様がご往生されました。
 私が最後にお会いしたのは、七月の末、入院先の病室でした。その時は既に声を失っていましたが、「三城さん」と声をかけると、ニッコリと微笑んでくれました。
 法要の後の挨拶をしてくださっていましたので、記憶に残っている方も多いと思います。篤信(とくしん)のご門徒で、率先してお聴聞を大切にされていました。いつもにこやかで、話し好きで、誰にでも直ぐに声をかけ、皆を和ませてくれるお人柄でした。そのような三城さんから学んだことや、思い出がたくさんあります。
 研修会や本願寺での念仏奉仕団、日帰り旅行など数々ご一緒させていただきました。そのような折、いつも仰っておられた一言がありました。法要や研修会で法話を聴いた時は、「今日の話は良かったね」。どこかに出かけた時は、「今日は楽しかったね」。ご飯を食べれば、「美味しかったね」と、最後に必ず仰っておられました。思い返せば、最後の一言が、心地よい余韻として残っていたのです。大切なことを教えてくださっていたことに気づきました。
 人間関係の中では、いつも楽しいことばかりではありません。上手く事が進まなかったり、もう少しこうすれば良かったという反省もあります。しかし、最後に一言、「今日は良かったね」、「楽しかったね」と言われたら嬉しいものです。励みにもなります。また一緒に頑張ってみようと思えるはずです。例え、その時が平凡であったとしても、最後の思いやりの一言が、その時を良かった時へと変え成すような一言です。
 是非、若者やこれから恋愛をしていく方々にもお勧めしたい一言です。ちょっと上手くいかなかったデートでも、最後に一言、「今日はとても楽しかったよ」と伝えてみてください。きっと楽しかったひとときにアップデートされると思います。
 今年も一月二十二日に、親鸞聖人(しんらんしょうにん)の御正忌報恩講(ごしょうきほうおんこう)が勤まります。親鸞聖人の曽孫、覚如上人(かくにょしょうにん)が聖人の遺徳を讃え、九十年のご生涯を記された書物があります。私にはとても情趣ある場面があります。いよいよ息を引き取る前の様子が記されているところです。親鸞聖人の最後の一言(お念仏)を申している場面です。

 『聖人弘長(こうちょう)二歳、仲冬(ちゅうとう)下旬の候より、いささか不例(ふれい)の気まします。それより以来(このかた)、口に世事(せじ)をまじえず、ただ仏恩(ぶっとん)のふかきことをのぶ。声に余言(よごん)をあらわさず、もっぱら称名(しょうみょう)たゆることなし』

 親鸞聖人は、一二六二年、旧暦の十一月二十日過ぎから、お身体がすぐれず、それ以来回復することはなく、人々がお見舞いに来られても、聖人は世間話をされず、ただ阿弥陀如来さまの仏恩の深いことを語り、南無阿弥陀仏とお念仏を称えておられましたとあります。
 三城さんは最後、声を発することができなかったけど、私はニッコリ微笑むお顔から、「住職にも仏法にも遇えて良かった」と、声なき声を感じ取れました。そして、お念仏称えつつ、行年八十三歳をもって往生の素懐(そかい)を遂げられたことと思います。

(住職 松岡文昭)