浄土真宗本願寺派 瀧上山 善立寺

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住職の法話

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寿命と無量寿(じゅみょうとむりょうじゅ)

最近は、健康産業の市場拡大が続いているようです。日本人男性の平均寿命も八十歳を超えました。そして、四人に一人が高齢者という時代になりました。しかし、病気を患う方も増え、政府も健康寿命に着眼して、病気にならない為の予防や健康管理の推進を図っています。

私も数年前から青汁を毎日飲んでいます。普段の生活では健康に悪いものを好む上、十分な休息を取らないことも多く、簡単に出来る健康法をと思い始めました。私の年代の方なら誰もが知っている、「まずい、もう一杯」のCMが脳裏に焼き付いているからです。濃い緑に苦い味が、なんとも体に良さそうな気がします。

国としても健康寿命を延ばし、健康促進と医療費の削減を行っていきたいようですが、元気で長生きしてポックリ逝くことは、自分の意志では出来ません。さらに寿命は延びていくことになるでしょう。 お釈迦様は、生老病死の教えを説かれました。つまり、この世に生を受けた者は、必ず老いと病を経て、死を迎えなければならないということです。老いたくなくても老いていかなければなりません。病気にかかりたくなくても病気になります。死にたくなくても死んで往かなければならないのです。この世の寿命には限りがあります。

私の実家の父は、癌で亡くなりました。祖母は、誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)で亡くなりました。兄は、難病を患い亡くなりました。つまり、寿命の原因は、おおかた病気か事故です。 お釈迦様は、毒キノコを食して、中毒により死に至ったと伝えられています。八十歳になり老衰したお釈迦様は、旅先で説法をしながら、生まれ故郷のカピラヴァストゥに向かわれました。その途中、マッラ国の少年、チュンダ(鍛冶工)に食べ物の供養を受けました。その食事の後に、赤い血がほとばしり出る激しい苦痛に襲われたそうです。諸説ありますが、食べ物の中に毒キノコが入っていたというのが優勢です。チュンダは、自分が施しをした食事によって、お釈迦様が苦しんでいる、そのことによってお亡くなりになることを、嘆き心を痛めました。

激しい下痢に襲われながらもチュンダを気遣い、「最後の供養を施したのだから大いに功徳がある」と言い、「嘆(なげ)くではない、これによって因縁(いんねん)ということが、明らかになったではないか」、「今、私が涅槃(ねはん)に入るのは、中毒して死ぬのではない。原因は生まれたからであって、中毒は縁である。縁がくればどのような死に方をするか分からない」と、チュンダの施しを喜ばれたそうであります。

つまり、自身が涅槃(仏の入滅(にゅうめつ))に入るのは、食中毒が原因ではないことを諭され、自身が死を迎える原因は、「この世に生を受けたからである」と言われました。しかし、私達は本当の死の原因を見ず、病気のことばかり気にしています。

健康寿命も大切ですが、生老病死の事実を見定めて、仏さまの願いを聞き、今を大切に生きていきたいものです。そして、やがては仏にまで成らせて頂くのです。この世の寿命には限りがありますが、お浄土参りさせて頂く私達のいのちは、限りなき寿命「無量寿」であります。

(住職 松岡文昭)